行動人 -知と行動が結びついたクリエイティブな循環型社会-
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長年にわたってハタハタや淡水魚などの水に関わる生物の調査や研究を行い、環境問題に取り組んでいる人たちがいます。

長年にわたってハタハタや淡水魚などの水に関わる生物の調査や研究を行い、環境問題に取り組んでいる人たちがいます。
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杉山 秀樹さん

NPO法人 秋田水生生物保全協会

県央 / 秋田市 / くらし/環境/自然
採捕されたゼニタナゴ(上段は産卵管が成長したメス、下段は婚姻色のオス)

採捕されたゼニタナゴ(上段は産卵管が成長したメス、下段は婚姻色のオス)

二枚貝のエラの中に産卵されたゼニタナゴの卵

二枚貝のエラの中に産卵されたゼニタナゴの卵

>ゼニタナゴの11年ぶりの発見について。 
「神戸大学と、国土保全などを手掛けるパシフィックコンサルタンツ株式会社(東京都)、秋田県立大学でつくる研究グループが2016年8月、雄物川流域の99地点で調査を実施し、環境省のレッドリストで絶滅危惧『IA類(ごく近い将来、野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)』のゼニタナゴの繁殖地を発見しました。
 本来、大きな湖沼や大河川を中心に生息していますゼニタナゴですが、外来種の脅威や生息環境の変化などの影響で激減し、雄物川流域でゼニタナゴの成魚が見つかるのは11年ぶりのこと。現状では、大河川での生息が確認されたのは雄物川となります」。

 

>調査方法は。
「雄物川は本流の長さが約112㎞で、ゼニタナゴのような希少種が生息しているとすれば密度も低いことが予想されます。こうした状況での水域調査は労力的にも時間的にも非常に大きなコストが必要です。そこで、最近になって発展している『環境DNA』を分析する手法を採用しました。環境DNAとは、水中に溶け出た魚のフンや表皮、体液などのDNAの断片のことです。
 調査では、雄物川の本流99地点で採取した水の環境DNAを分析し、ゼニタナゴのものと非常に似ているDNAが確認された2地点で採捕調査を実施したところ、オスとメスのゼニタナゴが見つかりました。さらにゼニタナゴが産卵する二枚貝を置いたところ、産卵していたことがわかり、繁殖が確認できました」。

 

>ゼニタナゴを取り巻く環境は。
「ゼニタナゴは雄物川を北限とする日本の固有種で、全長8~10㎝ほどのコイ科の淡水魚です。かつては霞ヶ浦や伊豆沼、利根川、八郎潟など、関東地方から東北地方の1都11県に当たり前のように分布していましたが、現在は東北地方のため池などでしか確認できない状況になりました。
 ゼニタナゴが減った原因には、いくつかの要因が考えられます。大きなものとしては、オオクチバス(ブラックバス)などの外来種によるゼニタナゴの成魚の食害、河川の改修による生息環境の変化、ため池などの水質悪化による二枚貝の減少が考えられます。そのほか、アメリカザリガニやコイなどによる二枚貝の幼生の食害や、観賞魚業者や水生生物の愛好者による捕獲の影響もあります」。

 

>今後について。
「ゼニタナゴが、本来の生息環境である大河川の雄物川で見つかりうれしく思っています。こうした調査で、環境DNAの手法が有効だと確認できたことも収穫です。
 今後もっとも重要なのは、定期的なモニタリング調査を続けることです。発見時からの増減はどうか、水質の状態はどうなのか、稚魚や成魚が何を食べているのか、雄物川の流速はどれくらいなのかなど、どのような要因がゼニタナゴにとって良いのか、あるいは悪いのかを分析していく必要があります。
 もうひとつ大切なことは、絶滅危惧種になる前の予防原則です。ゼニタナゴもかつては当たり前にいた魚でした。だからこそ希少種や、有用とされる魚だけでなく、普通にいる水生生物にも目を向けていきたいと思います」。

 

略歴
1950年、東京都出身。長年にわたってハタハタや淡水魚など水に関わる生物の調査や研究に取り組み、2012年にNPO法人秋田水生生物保全協会を設立。博士(海洋学)、秋田県立大学生物資源科学部客員教授。

 

 

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取材日など
週刊アキタ 第1967号 2017-12-08

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