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水・土・里の整備事業を通じて地域資源の活用に取り組んでいる人たちがいます。「仁井田地区での事業を通じて、子どもたちが地域の魅力を見つけて、将来的には農業の担い手の増加に結びつけたいです」と話しています。
松橋 久光さん(左)
水戸 憲光さん(右)
水土里(みどり)ネット秋田
収穫した仁井田大根を「はさがけ」の手法で天日干し
地元の子どもたちによる農作業体験
秋田市の伝統野菜「仁井田大根」の復活により地元住民と農業を結ぶ活動を続ける
水土里(みどり)ネット秋田
>仁井田大根とは
「仁井田大根は『仁井田さしびろ(葉ねぎ)』、『仁井田菜(青菜)』、『秋田蕗』などと並ぶ、秋田市仁井田地区の伝統野菜のひとつです。
青首大根などとは異なり、仁井田大根は地中深くに根を伸ばします。雄物川河口付近の仁井田地区は『秋田市の台所』とも呼ばれ、古くから野菜の産地として知られてきました。周辺は砂っぽい土壌で大根が根を伸ばしやすく、さらに栄養が豊かな畑があったことから良い大根ができたんですね。仁井田大根はたくあん漬けなどにするのが一般的で、食べてみると肉質が緻密で、パリッとした歯切れも特徴です。
近年になって生産農家が減少した理由はいくつかあり、生育が遅いことや肉質の固さのほか、収穫にかかる労力が挙げられます。仁井田大根は地中深くから1本ずつ引き抜き、洗い流してから『はさがけ』と呼ばれる手法の天日干しを行っていきます。こうした一連の作業は体力勝負のため、農家の高齢化にともなって減少したと考えられます」。
>「水土里の野菜倶楽部」の概要は。
「私たち『水土里ネット秋田(秋田県土地改良事業団体連合会)』は、水・土・里の整備事業を通じて地域資源の活用に取り組んでいます。その一環として、仁井田地区の伝統野菜の復活と特産化によって地域内外のコミュニティの活性化を図ろうと、2015年に地元の生産者の方々とともに『水土里の野菜倶楽部』を設立しました。仁井田地区には良い土をもつ畑が多い一方で、耕作放棄地が増えています。そうした農地を借り上げて仁井田大根などの伝統野菜の栽培に再活用しています。
農業への理解や関心を深めてもらおうと、地元の小学校や保育園に呼び掛けて、子どもたちの農作業体験にも取り組んでいます。先生方も積極的に協力してくれているので、ありがたいですね。
秋田市の園芸振興センターが近くにあるのも仁井田地区の強みのひとつです。私たちが企画した仁井田大根の漬物講習会などのイベントで、同センターに開催場所を提供していただく。そんな良い連携ができているのではないでしょうか」。
>今後に向けて。
「私たちの目指しているのは、多方向からの働きかけによる『農地のフル活用』です。たくあん漬けが広まれば米も売れる。米が売れれば農業全体が潤っていくはず。現在、県内の耕作放棄地の面積は約7411㌶で、耕作放棄率は5・4%と農業に関わる人が急速に減少している状況があります。仁井田地区での事業を通じて、子どもたちが地域の魅力を見つけて、将来的には農業の担い手の増加に結びつけたいと思っています。
仁井田大根については栽培講習会や、たくあん漬けづくりの講習会なども開いています。今後は事業化も視野に入れて、いずれはいぶりがっこのように、仁井田大根のたくあん漬けが秋田に人を呼べるような存在になってほしいです。
すでに伝統野菜を使った料理を提供する居酒屋さんも出てきています。そのほかにも、秋田の多彩な伝統野菜を復活しようという取り組みが生まれてきたら嬉しいですね」。
プロフィール
地元の生産者らと「水土里の野菜倶楽部」を設立。秋田市仁井田地区の耕作放棄地を活用して、伝統野菜「仁井田大根」栽培や小学生の農業体験などにより、地域の住民と農業を結びつける活動を実施する。