時計修理技能士の技術を活かし、小学校の総合的な学習の時間に「時計工作教室」を開いて時計のメカニズムを子ども達に教える一方、脳トレーニングにも役立つ「逆回り時計」を考案した人がいます。

美郷町で農業の傍ら、「時計工作教室」の指導や「逆回り時計」などアイディアある時計の開発をされている未来時計工房の小場裕之さんにお話を伺いました。

＞活動を始めたきっかけを教えて下さい。

１級時計修理技能士の国家資格を取得し、１４年ほど前まで腕時計の部品製作をする会社に勤務していました。会社をやめて自宅で農業をしていましたが、ある時、偶然テレビで針の無い時計を製作した人を取材した番組を見て、自分も既成の常識と異なる発想の時計を作れるのではないかと強い刺激を受けました。そして、会社に勤めていた時に、購入者から針が逆回りする不良品についてクレームを受けたことを思い出しました。「それなら、不良品ではなく、本当に普通の時計と反対に針が左回転する時計を作っても面白いのではないか」とひらめきました。理髪店や美容室ではお客さんが鏡に映った時計を見るため、裏返しの数字を左回りに配列し針も逆回りする時計を置いていますが、私は数字を裏返しにしないまま左回りに配列し針が逆回りする時計を考えました。時間を読み取ることに慣れるまでの大変さが、脳のトレーニングにもなります。

「逆回り時計」を作るため、まず百円均一ショップへ行き実験材料の時計を仕込んで、自宅で分解してみたところ、意外に簡単な仕組みで針を逆回りすることを発見しました。そして、「子どもさんの工作としても面白いのではないか」と思い立ち、さっそく時計工作教室のチラシを作って地元の仙南小学校へ持ち込みました。「時計の針が回転するメカニズムを勉強する」「理科ばなれの防止にもなる」という趣旨は、さいわい先生方にもご理解いただきました。

＞現在の活動を教えて下さい。

現在、仙南小学校で５年生の学年（２学級５３名）を対象に、総合的な学習の時間の授業として時計工作教室をやらせてもらっています。１学級ずつ授業を行ったので、工作道具は２７人分を私の方で準備しました。子どもさん方が、大変面白がって逆回り時計づくりに参加してくれました。時計内部の機械に触れることに関心を持つとともに、意外と簡単に針を逆回りに改造できることに驚いています。

この他、美郷町の仙南中学校・六郷小学校・千畑小学校、そして美郷中学校へ逆回りの大時計を寄贈しました。

また、美郷フェスタでは、生涯学習の一環で「オリジナル時計を作ろう」のコーナーを開設しました。これは逆回りではなく普通の時計を作るものですが、百円均一ショップの時計を改造し、文字盤を美郷町のゆるキャラ「ミズモ」のイラストに替えるなどで好評を得ました。

＞これからの活動について教えて下さい。

今後、逆回り時計を「脳トレ時計」として、もっと広めていきたいと思います。

逆回り時計だけではなく、今度はさまざまな面白い時計を開発してみたいと思います。ある特定の場所や目的のために使用するような時計ですね。例えば、見た目は文字盤に針が無いですが、ブラックライトを照らせば初めて針が浮き上がるようなもの。お客さんに時間を気にさせないような配慮が必要な場所などで需要があるかも知れません。